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バレエ@映画館:レビュー|『くるみ割り人形』英国ロイヤル2017/18シネマシーズン

2023/05/27

英国ロイヤルオペラハウスのシネマシーズン2017/18。

バレエやオペラの公演が映画館で観られる恒例のこの企画、そのバレエ作品第2弾、
『くるみ割り人形(原題:The Nutcracker)』
を観てきたので、感想をまとめました。

今後の作品ラインナップや料金、上映館などはこちらの記事にまとめていますので、ご参照ください^^

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タイムスケール(上映時間・休憩など)について

日本での公開に先立って生中継された時(2017年12月15日)の映像を録画したものが、そのまま上映されます。

上映タイムスケール

解説・インタビュー 18分
◆1幕 53分
(休憩) (13分)
解説・インタビュー 18分
◆2幕 58分
トータル上映時間:2時間40分

休憩の間はずーっと幕を閉じた舞台が映っていて、休憩の残り時間が分単位で表示されます。

今回は、休憩は1回のみ。トータル2時間40分(実質はもっと短いと思います)と、短めにまとまっています。

『くるみ割り人形』筆者の感想・レビュー

今回上映されるピーター・ライト版は、1985年の初演以来、ロンドンのクリスマスに無くてはならない風物詩となっているほどだそう。

筆者は、2011年発売のこちらのライト版DVD↓を持っていて、何度も何度も繰り返し観ているのですが、踊りはもちろん(こんぺい糖は吉田都さん&マクレイ!)、衣装・舞台美術・ストーリー展開、全てにおいてこの上なく素晴らしい名舞台なのです…(´▽`*)

今回のシネマ上映ぶんは、昨年ライト自身により部分的に改訂されたバージョン。中国の踊りなど、このDVDとは異なった振付となっているとのこと。

また、クララは大好きなフランチェスカ・ヘイワード!くるみ割り人形/ハンス・ペーターには何とも親しみやすい雰囲気を持つアレクサンダー・キャンベル、意外にもこんぺい糖を一緒に踊るのは初めてというサラ・ラムとマクレイと、期待のキャスト陣。

期待に胸を膨らませつつ、『せめてこの作品くらいはタイムリーにクリスマスシーズンに上映してほしい…』と日本の配給会社にプチ不満を漏らしつつ、映画館へGO!したのでした。

ストーリー・演出など踊り以外の部分について

サスガ!の演劇性。

英国ロイヤル・バレエを表すとき、必ずと言っていいほど挙げられる『演劇性』の高さ。その真骨頂を心行くまで味わえるのが『くるみ』ではないでしょうか。

『演劇性』と言葉にすると、過剰なドラマティックさを想像してしまいがちですが、英国ロイヤルの舞台の場合、あくまでも自然に物語が展開していく中に効果的に踊りが組み込まれている、という感じ。

物語のつじつまが合っているし、踊りに必然性が感じられるので、見ていてヘンな引っかかりを感じることなく、純粋に楽しむことにができます。

練り上げられたストーリー構成

細部までよく練られたストーリー構成もこの作品の魅力を増す要因となっています。

例えば、1幕のクリスマスパーティーの場面。よくよく見ていると、その後のストーリー展開の伏線となるエピソードがいろんなところに隠されていることがわかります。

特に子供のころって、日中に見聞きしたことが、夜中、夢うつつの中で断片的に思い出されることがありますよね。夜中に起き出してきてクララが体験した不思議な出来事も、就寝前まで続いたパーティーで記憶に刻み込まれた現実と夢とがないまぜになって"あの感じ"が引き起こされたなのかな?なんて思いました。

キャラクター設定も心憎いほど

何といっても強烈な印象を残すのは、ゲイリー・エイヴィ演じるドロッセルマイヤー。キャラ立ちまくり!の忘れがたいドロッセルマイヤー像を確立しています。

1幕冒頭・パーティーへの招待者が到着するシーンでも、クララのママを嫌っているのかハグせず素通りしてパパに直行する親戚のおばさんらしき人がいたりして、そこまで作りこむか!と思われるほど一人ひとりのキャラクター設定がしっかりしていて、このバレエに見応えを加えています。

ストーリーの中心人物にどうしても視線が行ってしまいがちですが、舞台端の目立たぬところにフト目が向いた時でさえ、ひとりひとりのキャラがしっかり息づいてづいているところに感心しますよ!

アートなコスチュームとヘア&メイクアップ!

デザインや色使いが秀逸なだけでなく、観客からは絶対見えなさそうな細部まで手抜き感ゼロな作りこみっぷりが素晴らしい衣装と、群舞に至るまでトータルコーディネートされたヘア&メイクアップも、ため息が出るほどの素晴らしさでした。

クララやくるみ割り人形/ペーター・ハンスの奇をてらわないコスチュームあり、夢の国の甘くゴージャスな世界観を表す贅を尽くしたコスチュームあり、舞台に立つすべての役柄が衣装やメイクでさらに引き立てられていました。

特筆すべきはやはり金平糖のカップルでしょうか。画面を通してみても、凝りに凝った造りでアート作品のよう。手に取ってまじまじ眺めさせていただきたいです…

踊りとダンサーについて

フランチェスカのクララ!

こんなルックスに生まれたかった…と憧れる、クールでエキゾチックなお顔立ちと、きゅっと引き締まったプロポーションがとっても魅力的なフランチェスカ・ヘイワード。かなり小柄な彼女ですが、舞台上ではまばゆい存在感を放ちます。

テクニック面でも全く危なげなく、細やかさと伸びやかさ双方を感じさせる美しい踊りでうっとりしてしまいました(´▽`)~!

ちょっと調子悪いのかしら?のラムちゃん

細くて長い手足とエレガントな雰囲気がとってもステキなサラ・ラム。

今回の金平糖をとても楽しみにしていたのですが、筆者的には精彩を欠く感じが否めませんでした。バリエーションのラストがきれいに決まらなかっただけでなく、全体的な印象も薄くてあまり記憶に残らない感じ。。。

昨年度シネマシーズン『ジュエルズ』でのルビーは圧巻だったのですが、ご本人がすごく個性的というタイプでないだけに、アクが強い振付のほうがハマるのかしら?

DVDで何度も観た吉田都さんの、手足の先の先まで意識が行き渡たった踊りがインプットされてしまっているので、どうしてもそれをなぞろうという意識が働いているのかもしれませんが、立ち上がって拍手喝采!という感じではありませんでした…(´ー`)

エキゾチックなメリッサ・ハミルトン@アラビアの踊り

男性3名、女性1名によるエキゾチックなアラビアの踊り。

子供の頃はこのスローで怪しげな音楽と踊りをちょっと退屈に思っていたものですが、大人になってからダンサーたちの緩やかで美しい動きやしなやかな肉体美を愉しむことができるようになりました。ライト版のそれは、次々変わる4名のフォーメーションがユニークでこれまた飽きさせないものに仕上がっています。

今回の紅一点はメリッサ・ハミルトン。クールで高貴なお顔立ちと柔軟性あるしなやかな美しい身体がぴったりハマっていて、かなりの存在感を放っていました。 彼女の踊り、他でも観てみたい!と思わせられました!

ローズ・フェアリー役のヤスミン・ナグディ

プリンシパル昇格後、初のシーズンを迎えて、ノリに乗ってる感のあるヤスミン・ナグディ。

花のワルツにおけるメイン・キャスト"ローズ・フェアリー"の難しい踊りを、相変わらず軽やかかつクリアに、そして伸びやかに踊って魅せてくれました。

超絶技巧もパワフルにこなすラウラ・モレラのような力強さと、かつてのアリーナ・コジョカルのような少女性を兼ね備えた感のあるヤスミン。今後の活躍が楽しみなプリンシパルのひとりです!

まとめ

最も有名なバレエ作品のひとつ、『くるみ割り人形』。発表会などで上演される機会も多く、親しみやすさの面ではナンバー1なのではないでしょうか。

子供でも楽しめる作品の場合、ともすると"子供だまし"に転じてしまいがちですが、そこはサスガの英国ロイヤル。全てにおいて妥協のないハイクオリティな作品作りで重厚感ある仕上がりになっています。

インタビューによると、こんぺい糖は13組、クララ&ハンス・ペーターが6組と、多くのキャスティングパターンがあるそう。今回目にしなかったおなじみのあのダンサーたちは、別の日にキャスティングされているのね!と思うと、イギリスに飛んで行って半月ほど毎日コヴェントガーデンに通いたい~!!(ハンカチを噛む…)

~reverence~

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