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バレエ公演レビュー|『ル・グラン・ガラ』2018年1月13日@東急シアターオーブ

2018/01/17

2018年1月11日~13日、東京・渋谷の東急シアターオーブにて開催された、パリ・オペラ座の5人の精鋭ダンサーによる公演『ル・グラン・ガラ』。

新年気分抜けきらぬ1月の13日(土)、昼公演を観てきたので、忘れないうちにその感想を書き留めておこうと思います。

 
※お名前については、姓名区別せず筆者がしっくりくる表記を使わせていただいている部分があります
 

 


 

バレエ公演『ル・グラン・ガラ』とは

パリ・オペラ座バレエの精鋭ダンサー5人・演目は2つのみの、シンプルなバレエ公演『ル・グラン・ガラ』。

 
出演者は、エトワールとして不動の地位と人気を確立しているマチュー・ガニオとドロテ・ジルベール、近年エトワール昇格したばかりのジャルマン・ルーヴェとユーゴ・マルシャン、階級こそプルミエール・ダンスーズ(エトワール一歩手前の段階)ではあるものの人気・実力ともに他4人に勝るとも劣らないオニール・八菜。

 
演目は、いずれもワーグナー作の音楽にのせて振付家ジョルジオ・マンチーニが創作した『ヴェーゼンドンク歌曲集』と『トリスタンとイゾルデ』。

 
今公演が世界初演となる『ヴェーゼンドンク歌曲集』は、2014年に初演された『トリスタンとイゾルデ』の序章的パートとして創作されたのだそう。

 
中世ヨーロッパの悲恋物語に題をとったこの2つの連作的作品、若手のルーヴェ・ユーゴ・八菜さん3人で『ヴェーゼンドンク歌曲集』を、続いてマチューとドロテのペアが『トリスタンとイゾルデ』を踊ります。

 
 

『トリスタンとイゾルデ』について

『トリスタンとイゾルデ』って、、、なんとなく聞いたことがあるものの(どこでだろう…漫画かな?)、『悲劇的に終わる許されぬ恋の物語…みたいな感じよね?』というぺら~んとした感想しか浮かびません。。。

ちらりと調べてみると…

王の甥トリスタンと王の妃イゾルデの道ならぬ恋を描いた、中世ヨーロッパで宮廷詩人たちから口伝えで広まった悲恋物語。

なのだそう。

今回のバレエ作品『トリスタンとイゾルデ』で使われたワーグナー作曲の音楽は、この物語をベースとして創作された歌劇の劇中曲。

ワーグナーって、歌劇をたくさん書いてたんですね。知らなかった。。。

 
 

『ヴェーゼンドンク歌曲集』について

歌劇『トリスタンとイゾルデ』の創作中、ワーグナー自身が実生活で、彼のパトロンであったヴェーゼンドンクの妻マティルデと道ならぬ恋愛関係にあったそう。

そのマティルデが書いた詩に曲付けして創作されたのが『ヴェーゼンドンク歌曲集』なんですって。確かに女性の切なく哀しげな唄声が印象的でした。。。

同時期に作曲された『トリスタンとイゾルデ』には、『ヴェーゼンドンク歌曲集』に見られるフレーズが用いられるなど、相互にリンクしている作品とも言えます。

バレエ作品としての『ヴェーゼンドンク歌曲集』では、八菜さんがマティルデ、ユーゴがワーグナー、ルーヴェがヴェーゼンドンクという設定が一応はなされてますが、振付家マンチーニによる解説(プログラム記載)によると、この3人の具体的な物語を描いたものではなく、この関係性における感情の動きをこそ美しい音楽にのせて表現したい、とのことです。

 
 
 

感想

 

『ヴェーゼンドンク歌曲集』

オニール・八菜さん、ユーゴ・マルシャン、ジャルマン・ルーヴェの3人とも、昨年夏の『バレエ・スプリーム』で来日していたので、半年経たないうちにまた観られて嬉しい限り^^!

夏とは打って変わって、何かの役柄を演じるのではなく抒情的表現に徹する彼らの踊りは、とても新鮮でした。

八菜さんは、夏よりさらに身体が絞れてボディラインが際立ってきた感あり。特に腕の表現が繊細で、美しかったです。2人の男性の間で揺れ動く女性をリリカルに表現していました。

夏に観た時、それ以前より明らかに進化してる!と驚いたユーゴも、さらなる進化と新たな一面を見せてくれました。夏以降ケガに泣かされてきたそうですが、そうとはとても信じられぬダイナミックさと繊細さある踊り、男性らしい偉丈夫な存在感に『おおっ!』とまた驚かされましたよ。

これまた昨夏の「うっかりさん」なイメージがまとわりつくルーヴェくん(その理由はこちらの記事で)。ユーゴより身体が一回り小さいせいもあるかと思いますが、2人で踊っているとどうしても目がユーゴに行ってしまう… 同じ振りで同時に踊ると、明らかにユーゴの踊りのほうがより多くを物語るんですよね… 

 
 
身体の線が際立つヌードカラーのミニマムなコスチュームをまとった3人の、絡みあうようなフォーメーションがとても印象的な振付。ステキな作品でした。

ただ、リハ不足のせい?か、2人や3人での踊りに同調性が欠けていたのがちょっと残念・・・

 
 

『トリスタンとイゾルデ』

この作品『トリスタンとイゾルデ』は、一部のみ2016年の公演『月夜に煌くエトワール』で観ているのですが、全パート通しで観るのは初めて。

ドロテの旦那さまである写真家ジェームス・ボルトによる映像が挟み込まれつつ、3つのパ・ド・ドゥを通してトリスタンとイゾルデの悲恋が描かれます。

踊るのは、世界で一番美しい(に違いない!)デュオ、ドロテ&マチュー。

ミュシャの絵から抜け出てきたみたいな美しさを持つだけでなく、世界有数のバレエダンサーでもあるふたり。。。もはや生き神様レベルです。。。

舌でべろーーーーーんとパートナーの腕を舐めたり、大口を開けて『アアアーーー!!!』と叫ぶような動きが振付に組み込まれているのですが、このふたりの手にかかるとそんな動きさえ芸術的な美しさ… 振付家マンチーニがぜひにと願って実現したコラボレーション、というのも頷けます。

全編通して絶望感漂う中にも、妖しく官能的な光も感じさせたふたりのデュエット。哀しくて、妖艶で、何より美しすぎて、今となっては夢の中の出来事のようです… いいもの見ました…。

↓う・うつくしーー!

 
 
 
出演者5人だけの、プライベイト感ある小公演でしたが、幕ものの大作やバレエ団挙げての来日公演とはまた違った魅力ある舞台でした。

新年早々いいもの見ることができ、ココロにいっぱい栄養をもらえた気がします。
シアワセなひと時でした!

 
 
~reverence~

  
 

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