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バレエ公演レビュー|バレエ・スプリーム Bプロ2017年7月29日

2017/08/22

2017年7月下旬~8月上旬、東京・兵庫(西宮)・福岡で開催の、英国ロイヤルバレエ&パリオペラ座の合同ガラ公演『バレエ・スプリーム』

7月29日(土)文京シビックホールで行われたBプロ(1日2回公演のうちマチネの方)を観てきたので、その感想を。

※お名前の記載方法については、出演者欄には主催者発表の表記を、感想本文内では筆者がしっくりくる表記を姓名区別せず使わせていただいています。
 
 


 
 

第1部・パリオペラ座チーム

2日間のAプロから1日の休みを挟んで始まったBプロは、Aプロと先攻/後攻入れ替わって、オペラ座からスタート。ふんわりとロマンチック、かつゴージャスなフレンチスタイルを先に愉しむ恰好となりました。

 

『グラン・パ・クラシック』

出演:オニール・八菜、ユーゴ・マルシャン

高らかに鳴り響くファンファーレさながら公演の始まりを飾ったのは、『グラン・パ・クラシック』。特にストーリーは無く、グラン・パ・ド・ドゥの形式に則って純粋に踊りとしてのクラシックバレエが楽しめる演目です。

舞台左右の袖から八菜さん&ユーゴが同時に登場すると、照明のスイッチを一気にMAXまで上げたかのように舞台がまばゆさに包まれました。白を基調としたこれぞクラシックバレエ!という衣装をまとったふたりは揃って背が高く、バツグンの舞台映え。

昨年夏の『エトワール・ガラ』で見た時は、まだプルミエール・ダンスーズだったユーゴ。大柄で男らしい系のダンサーだなぁ…という感想を持ったくらいで、強烈な印象は受けなかったのですが、今回はほぼかぶりつき席で間近に見られたせいもあってか、ダイナミックで力強いだけでなく、足先の動きや戻しのポジションなど細やかな部分にも意識が行き届いた踊りぶりに、4か月前のエトワール任命も大きく頷けます。

観客の多くがお目当てにしていたであろう八菜さんの踊りも、華があってエレガントかつ安定した踊り!会場に満ち満ちていた期待を裏切らないすばらしさでした^^ 背格好や踊り方が、なんとなくオーレリー(デュポン)を彷彿とさせるなあ…と感じたのは筆者だけでしょうか? オペラ座らしいシックでつややかな踊りが印象に残りました。

 
 

『ロミオとジュリエット』1幕よりパ・ド・ドゥ(バルコニーシーン)

出演:レオノール・ボラック、ジャルマン・ルーヴェ

ガラ公演でよく踊られる、‟ロミ・ジュリ”のバルコニーシーンでのパ・ド・ドゥ。Aプロで英国ロイヤルチームが踊ったのはマクミラン版でしたが、この日のBプロではオペラ座のふたりがヌレエフ版を踊りました。この2つの版は振付が全く異なり、見どころも違ってくるので、見比べるのも趣向ですよね。

2016年末のエトワール任命からまだ1年経っていない20代半ばのふたり、初々しく&若々しさが感じられてナイスなキャスティング。 特に、小柄でくるくる巻き毛の妖精さんみたいなボラックちゃん(勝手にそう呼んでるのです)は、ジュリエットのイメージにぴったりです^^

前々日のAプロでブラックスワンのパ・ド・ドゥを踊った時は、コンディションが悪かったのか32回転を完遂できず、半分くらいで止めてしまったので、今日は大丈夫かな…?とちょっと心配していたのですが、恋する乙女の表情でロミオを見つめる表情が本当に愛らしく、ともすればせわしない印象を残しかねないヌレエフ版の細かく早い動き頻出の振り付けも難なくこなしていて、やっと本領発揮できたのでは?と思います。心なしかご本人もホッとしているように見えたよーな…。

繊細でナイーブそうな外見のせいか、見ていてちょっとハラハラしてしまうルーヴェくん(大きなお世話なのは重々承知しておりますが^^;)。
ユーゴ・マルシャンになぜか3ヶ月ほど先立ってエトワール任命されていて、技術もプレゼンスも持っているのだと思うし、難しいマネージュもこなしていたのですが… 踊り以外の部分でツッコミどころが多くって、踊りがあまり印象に残らなかった^^;

この時も、ボラックちゃんのスカートが丸はだけになったまま=下腹部まる見せ・あられもない姿なままサポートし続けていて、『スカートにも気を配ってあげて!』とハラハラ… 踊り終わりのダンドリを忘れちゃったのか、なかなかレベランスを切り上げず、幕を下ろすタイミングが係の人と噛み合っていなくてハラハラ…(苦笑) 両チーム総出演の第3部でもちょこちょこやらかしちゃっていて(後述します)、とにかくオモシロいルーヴェくん。母のような気持ちで、ガンバレ!と応援したくなります。

 

ヌレエフ版『ロミ・ジュリ』が観たい方には、こちらのルグリ&ルディエール出演のDVD(ルドルフ・ヌレエフ振付・演出「ロミオとジュリエット」 [DVD])がおススメですよ。撮影から時は経っていますが、間違いなく名盤です。

 
 

『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』

出演:ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン

チャイコフスキーの曲に乗って、音符を紡ぐように踊られる『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』(通称:チャイパ)。ストーリーは無く、純粋に踊りを満喫できる演目です。"こんな動きもアリなんだ!"とハッとする身体の使い方が多いバランシン作品の中にあって、この踊りはごく正統派なクラシック・バレエらしい振付。とはいえ、甘美な旋律で始まり、クライマックスに向けて盛り上がっていく音楽に合わせて踊ると、最後のほうには足が言うことを聞かないほど体力を使うのだそう。

そんなチャイパを踊るのは、ミリアム&マチアス、余裕と貫録のエトワールのふたり。

出産を経て復帰したとはとても思えぬ、儚げでか細いシルフィードを地で行くようなミリアムは、さらさらと水が流れるように軽やかで透明感が感じられる踊りを見せてくれました。比較的メリハリの効いた踊りを好む筆者にとっては、多少物足りなさを感じたことは否めませんが、これみよがしに身体能力を誇示しない踊り方に矜持が感じ取られ、バランシンをフレンチスタイル基盤のダンサーが踊るとこうも違うのか!と新たな発見をさせてくれました。

エトワール任命から8年以上となるマチアス、独特のプロポーションがあまり好きになれなかったのですが、数か月前に映画館で上映されたオペラ座の2009年公演『バレエ・リュス』で刮目ものの"薔薇の精"を観て以来、これからは心して彼の踊りを観なければ!と遅ればせながら注目度を上げての今回です。

謙虚で誠実さが感じられる物腰でありながら、素晴らしいテクニックと芸術性が発揮された踊りは圧巻!!!で、熱心な固定ファンがついているのも納得です。歓声に応える時の真摯な態度にも、好感度UP!目の前の観客を大事に思ってくれていることが伝わってきて、すっかりファンになっちゃいました^^。

 


 

第2部・英国ロイヤル・チーム

筆者が最も好きなバレエ・カンパニー、英国ロイヤル♪ Bプロでは後攻でした。
 
 

『真夏の夜の夢』

出演:高田 茜、ベンジャミン・エラ

妖精の世界を舞台に繰り広げられる(ちょっと風変わりな)物語『真夏の夜の夢』から、妖精の王オベロンと女王タイターニアの踊りを披露してくれたのは、昨年プリンシパルに昇格して大きな話題となった高田茜さんと、2017/18シーズンにソリスト昇格が決定しているというベンジャミン・エラ。インスタを見る限り、ふたりはプライベートでもとても親しいようで、息の合った踊りでした^^

映像ではよく拝見するものの、ソロを生の舞台で観るのは初めてかも?な高田さんの踊り。"華奢"と言うしかない細く手足の長いたおやか~なプロポーションからはとても想像できない芯の強さとしなやかさ、軽さが同居した踊りでした。特筆すべきはジャンプ系のパの美しさ!なんとも軽やかでバネが効いていて小気味よく、クリアな足さばきが際立っていました。いつかジゼルやシルフィードが観たいなあ…

お名前やお顔は認識していたものの、ソロでの踊りを観る機会が無く、どんなダンサーさんなのか未知数だったエラくん。たぶんとっても優しい人なんだろうなあ…と思わせるソフトな雰囲気と、躍動感ある踊りで健闘ぶりが光りました。来シーズンのソリスト昇格でソロが観られる機会も増えそう。注視しなければ。

  
 

『タランテラ』

出演:フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ

バランシン振付の『タランテラ』。3/8拍子または6/8拍子のノリのいい音楽で踊られるイタリアのフォークダンスをベースにした作品で、ところどころタンバリンを片手に踊ります。7分弱しかない作品ですが、フォークダンス的な動きやコミカルな動き、脚を高く振り上げたりギャロップっぽい動きなどと、クラシック・バレエのパが絡んで、とても興味深く&難しい振付!系統としては、"白鳥"の『ナポリの踊り』に近いと思います。

とっても小柄ながらクリアでキレのある踊りで、大舞台でも全く見劣りしないフランチェスカ・ヘイワードと、バネ効きまくり!で身体能力が高く、爽快な踊りが魅力のマルセリーノ・サンベは、この作品に打ってつけのペア!

真っ赤なベロアの身頃に真っ白なスカートのチュチュで登場したフランキーには、闊達で中性的な魅力が感じられる美しさにいきなり心をわしづかみにされてしまいました。ハマらないと不格好に見えてしまうコミカルなポーズも、素晴らしく可愛く決まっていたし、本当に"魅せる踊り"ができるダンサーだなあ…と、改めて惚れなおしました。

頭と腰に布切れを巻いた系の衣装がめちゃくちゃハマるサンベくん、いつもながら陽性の魅力を振りまきつつ、ダイナミックかつ爽快な踊りが気持ちよかった!プリンシパル一歩手前のファースト・ソリスト昇格が決まっているそうで、エラ君と同じく今後が楽しみです~♡

 
 

『白鳥の湖』第2幕よりパ・ド・ドゥ

出演:金子扶生、フェデリコ・ボネッリ

ケガで降板のサラ・ラムに代わって今公演への参加が決まった金子さんと、安定感抜群・正統派オトコマエのボネッリが踊ったのは『白鳥の湖』から、王子と白鳥の出逢いの場面で踊られるアダージオです。あまりにも有名な作品の、一番の見どころとなる踊りのひとつ。ゆっくりと物悲し気な音楽に合わせて、身体の全てのパーツに神経を行きわたらせた踊りが要求されます。

サラ・ラムの降板は本当に残念でしたが、膝の手術から最近カムバックを果たした金子さんの踊りがようやく観られる!と楽しみにしていたこの演目。端正でラインの美しい踊りはとってもステキでしたが、バリエーション部分はカットになっていたこともあって"金子さんらしさ"みたいなものを発見するまでには至らず。他の作品での踊りも観てみたい!と思いました。

片やあらゆる映像作品で観ているボネッリ、ライブの舞台で観るのは意外と初めてかも?!ディズニーアニメの王子様を地で行くルックスと、美しいポージングがサマになりすぎていて、うっとりしてしまいました。王子のバリエーションもカット…踊ってほしかった…

 
 

『ドン・キホーテ』よりパ・ド・ドゥ

出演:ヤーナ・サレンコ、スティーブン・マックレー

ガラ公演で踊れば盛り上がること必須!の演目、ドンキのパ・ド・ドゥ。多少アラがあっても、ノリと勢いがあればOK!みたいなとこもあるドンキですが、ミス&ミスター・パーフェクトなヤーナとマクレイが踊ると一体どうなるの???!!!と全プログラム通じて最も期待値が高かった演目です。

ここだけ熱量が違い過ぎてしまうかも、ですが、、、圧巻!の一言に尽きます。素晴らしすぎて泣いちゃいました。ドンキで泣くなんて想定外ですが。

回転や跳躍など超絶技巧てんこ盛りの、ガラ公演向きに"盛った"ハデな振り付けではあったのですが、全ての動きとポーズが最も美しく見えるラインで・角度で・スピードできちんと正確に行われていて、バレエの神さまが降りて来てその舞いを見せてくれた、みたいな、後光ビカビカのふたりの踊りでした。

ワオ!と思わず声が漏れ出てしまうシーンがこれでもかと続いたあの踊り、思い出すだけでトリハダ… これを超える感動がこの先あるのかしら…?ことによると人生ベストかも、な一生忘れられないドンキでした。

 
 

第3部・『眠れる森の美女』ディヴェルティスマン

第3部は、オペラ座&ロイヤル合同チーム、全員入り混じってのお祭り的プログラム!

舞台上に、複数の王子と複数のオーロラ姫が次々現れると会場から笑いが^^。

八菜さんの優雅なリラの精のVa.から始まり、続いてローズ・アダジオ。オーロラ姫は高田さん、求婚する各国の王子役はマクレイ、エラ、ルーヴェ、ユーゴと、実際の舞台では絶~っ対にありえない超・贅沢メンバー!この配役だけでもウケます。

企画としては楽しませることに重きが置かれているものの、踊りはきっちり。高田さんのオーロラ姫、いつか全幕で観たいな… マクレイの他メンバーを見守るような笑みがいいわ…さすがリーダー…とうっとり見惚れていたのですが…

公演終盤に来て気が緩んだのか、ルーヴェくんが小道具のバラをボトリ。慌てて拾い上げましたが、隣にいたオペラ座の同僚ユーゴに苦笑され…^^;

さらに、最後の締めポーズの立ち位置に入るタイミングにも遅れ、急いでタタタ…と小走りでカバーを試みるも、曲終わりに間に合わず!Σ(゚Д゚)

先述した"ルーヴェくんうっかりさんかも?疑惑"ですが、このローズ・アダジオで立証されてしまいました(笑) 今度から彼の踊りを観る時にはハラハラ感がありそう。"うっかりエトワール"ルーヴェ…がんばれ! 

 
 
本プログラムで『タランテラ』を踊った、大好きなフランチェスカとサンベのペアは『青い鳥』のパ・ド・ドゥを踊ってくれて、これまた役柄にぴったりハマっていました! なぜかコーダ部分だけオペラ座チームからユーゴ(王子から衣装をチェンジして)が登場したのですが、オペラ座の『青い鳥』のコスチュームはかぶりもの感ありありで、いかつい系のユーゴに全っ然似合っておらず、笑いをこらえるのに困りました^^;

オーロラと王子の結婚式のパ・ド・ドゥは、満を持してのヤーナ&マクレイ。燦然と輝く余裕たっぷりの踊りで魔法にかけられたようなひと時でした。

同PDDの王子のVa.を踊ったのは、マチアス。マクレイとは一味違った、エレガントな踊りかつ高度なテクニックで、こっちの王子もステキ~!と目がハートになってしまいましたよ。 

 
全出演者が左右から1ペアずつ次々と登場してはリフトや回転などを披露してくれたコーダは、花火大会のフィナーレのよう!!! お祭り気分が最高に盛り上がったところで終演したのでした。

 
 

全体的な感想

超豪華な海鮮丼を食べたみたいな気分…とは筆者が終演後、姉に漏らした弁。バレエの魅力がぎっしり詰まった、観客を楽しませようという心意気がひしひしと感じられるプログラムで、製作者&ダンサーの皆さんにありがとう!と言いたいです。

 
以下、‟思ったこと”メモとして…

マクレイは神の領域に達した(笑)。
ヤーナのフィジカルはハンパない。 
マチアスの芸術性に感動。
八菜さん&ユーゴのペアがいい!今後も組んでほしいな。
フランチェスカ、やっぱり好き♡プリンシパルとしての今後の活躍が本当に楽しみ!

そして、、、がんばれ!ルーヴェくん!しっかり!(笑)

 
 
~reverence~ 
 

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