バレエ用語と動き| 1~5番ポジション+6番(・・・と、大人バレエの実際)
2023/05/25
日々のレッスンでさらっと使われがちな、
『これだけは知っておきたいバレエ用語』をピックアップしました。
この記事では、バレエのレッスン初日から登場するであろう『1~5番ポジション』と+αとして『6番』を取り上げました。
『6番』は、クラシック・バレエの正式なポジションではありませんが、主にレッスン時にしばしば耳にするので、この記事の最後で少し触れておきます。
なお、記事内では『脚=骨盤から足先まで(legs)』『足=足首から下(feet)』とイメージして漢字表現を使い分けています。
クラシック・バレエの『起点・終点』となる1~5番ポジション
脚の上げ下ろし、プリエ、回転、ジャンプ、移動、、、クラシック・バレエの動きの起点であり、終点となるのが1番~5番の5つのポジションです。
どんなに足が高々と美しく上がっていても、回転の回数が多くても、ジャンプが高く跳べても、きちんとしたポジションで始まり・終わっていなければ、クラシック・バレエとしての美しさは損なわれてしまいます。
5番なら5番に、1番なら1番に、その都度その都度きちんと戻っていなければならないのです。
大人バレエ初心者の方にとっては、身体を鋳型にはめ込むような感覚があるかもしれませんが、バレエの基本中の基本となるポジション、レッスン開始のその日からあるべき姿を目指してひたすらストイックに取り組みたいものです。
『足の位置』以外にも大切なことが。
この記事では便宜上、足裏の絵を使って1~5番ポジションの形を説明していますが、『足の位置』が各ポジションに入っていればよいというものではなく、足以外の部分も含めて全身がトータルで整ってこその1~5番ポジションです。
1~5番ポジションに共通する、足の位置以外に意識すべきポイントを以下に挙げます。
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- 全身の引き上げ ー頭のてっぺんを真上から糸で引っ張り続けられているような感覚を持つ。それにより背中がまっすぐ(=前に丸めず後ろに反らず)になり、首も最大限まで長くなる。
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- アン・ドゥオール ー脚の付け根から足先まで外側へ向ける状態を指すアン・ドゥオール。1~5番ポジションもアン・ドゥオールあってこそ、ですが、無理に足先を広げようとして足裏の一部が床から離れてしまってはいけません。
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- 上半身 ーデコルテ・背中は広く。肩は前に丸めこまない。首・腕・肩は力んで硬くせず、柔らかく。肋骨が開いていかないよう締める感覚を持つ。
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- 重心 ー前後左右いずれかに偏らず、均等であること。全身を引き上げつつも、足裏全体はしっかり床を押す感覚を持つこと。
…書くのは簡単ですが、これらが身につくまで(そんな日が来るのかしら?)、年単位のたゆまない努力が必要ですね^^;
とはいえ、こうあるべき!という認識持たずしては、進歩もない、ということで。。。頑張りましょう!
前置きが長くなりましたが、ここからは1~5番までのポジションを順に確認していきます。
1~5番ポジション
【1番ポジション】
◆1番、かくあるべし
足裏の絵のように、両足が外側に開き一直線(180度)となり、両膝と内腿が密着し、隙間が無い(向こう側が見えない)状態、が理想です。
◆大人バレエでの実際
大人バレエの場合は、足の角度は出来る限りのところまで、と言われる場合が多いです。身体の他の部分の正しい形を壊したり、バランスを崩してまで、両足で一直線を作ろうとしなくてもよいよ、ということです。とはいえ、両足とも等しい角度で開かなければなりません。
筆者としては、特にこの1番ポジションをとるときに『お尻・太ももの内側・膝の裏・ふくらはぎ』を、『両側から・均等な力で・密着させようとする』感覚を意識すると、脚の付け根から外へ外へ…の『アン・ドゥオール』感覚が最もつかみやすい気がします。
多くの方が1番ポジションをとる際に、先に脚の最下部・かかと同士をくっつけて両足を外に開いて置き、その後脚全体を密着させようとする、という順番かと思いますが、感覚としては、上部から順番に(お尻⇒内腿⇒膝裏と)密着させようとする力が働いた結果として、両足が外側に開いている=1番ポジション、という順番を意識したほうがよいのではないかと思います。
海外のバレエ団のレッスン風景映像を見ていると、お尻~膝のあたりまでは全くスキマなく両脚が密着しているのに、かかと同士は離れている、という「逆Y字型」っぽい1番ポジションをしばしば見かけます。
考えてみれば、X脚のダンサーがアン・ドゥオールすれば、逆Y字になるのは当然のこと。
それを見て、1番ポジションで意識するべきは、両足のかかとをくっつけて足を180°に開こう!とすることではなく、むしろくっつけようとする部位はお尻・内腿・膝裏なのでは?と思うにいたりました。(メソッドによる考え方の違いなどもあるかもしれませんが。。)
1番ポジション…奥が深いですね。
【2番ポジション】
◆2番、かくあるべし
1番との違いは、足の幅です。両かかとの間に足の長さ(≒靴のサイズ)位の幅を空けて立ちます。重心は両足に均等にかかっており、両脚と床のラインで二等辺三角形ができているポジションです。
両脚の間には空間があるものの、『お尻・太ももの内側・膝の裏・ふくらはぎ』を、『両側から・均等な力で・密着させようとする』意識が必要なことは、1番ポジションとなんら変わりません。
◆2番・大人バレエでの実際
他のポジションと比較するとそこまでのカベを感じないのが2番、ではないでしょうか。それゆえに、内腿の筋肉への意識が薄れていたり、膝がのびていなかったりと、緩みがちなのもこのポジションなので、自戒が必要です。
1番もしくは5番から、横にタンジュし、その足先があるあたりで足を床につけ(=ア・テール)で2番ポジションをとることがほとんどですが、足の間の幅が自分が思っているよりも広く開いてしまっていることが多いので、感覚がつかめるまでは鏡を見ながら調整すると良いかと思います。
(英国ロイヤル・バレエのレッスン映像を観ていて、団員のダンサーでさえ『2番開きすぎですよ~』と注意を受けているのを発見しました!)
【3番ポジション】
◆3番、かくあるべし
図のように前の足のかかとを後ろの足の土踏まずあたりに置き、足を半分クロスさせるのが3番です。後述しますが、前の足のかかとをぐぐっと後ろ足のつま先まできれいに重ねると5番ポジションになります。
◆3番・大人バレエでの実際
筆者の経験からすると、レッスンで『5番が無理なら3番で』という、5番の代わり、という立場でしか登場機会が無い3番ポジション。。。
3番ポジションの存在意義を調べてみたのですが、少なくとも『クラシック・バレエ』の範疇では『3番ポジション指定』はほぼ無いようです。(海外のサイトには『出来そこないの1番か5番に見えてしまう』というキビシい見解も!)
キャラクター・ダンス(民族舞踊など、全幕物のバレエ作品でしばしば踊られる。ブーツやヒールのある靴を着用する場合が多い。)か、男性ダンサーが観客からの喝采にこたえてお辞儀する際などに(3番で前の脚を少しまげて頭を下げるあのポーズです)見受けられる程度だとか。…確かにそうかも。。。
3番は両脚を完全に咬み合わせる5番よりもバランスがとりずらく、内腿に使い方にも違和感があると言うクラシックバレエのダンサーも多いそう。
ちょっと存在感の薄い3番ポジションですが、これも世界共通の1~5番ポジションの1つ。突如『3番』の言葉を聞いても、戸惑わない程度に覚えておきましょう。
【4番ポジション】
◆4番、かくあるべし
図の通り、足は5番ポジションを足の長さぶん位の感覚を空けて前後に広げ、正面から見たときに両足それぞれのかかととつま先のラインが同一線上になるのが4番ポジションです。
重心は前後の足の真ん中にあり、骨盤は前後左右にねじれることなく正面を向いていなければなりません。
◆4番・大人バレエでの実際
無理に理想形をとろうとすると骨盤がねじれてしまいがちなポジションなので、大人バレエの場合には『足の重なりを浅くして(3番を前後に広げたくらいに)もいいですよ』、とおっしゃる先生も。
また、アン・ドゥオールの意識が膝から下だけに集中してしまいがちなポジションなのですが、お尻・内腿をより意識してターン・アウトし、お尻が出てしまわないようにしましょう。
バランスのとりやすさ、感覚のつかみやすさでいうと、一番難しいのがこの4番ポジションではないでしょうか。(みなさんはいかがでしょう?)
踊りの中では、ピルエットの直前にとることが多い4番ポジション。しっかりとれていないと次の動きにまで影響してしまいます。『なんとなく4番』ではなく、骨盤・重心位置・アンドゥオール、いろんなことに意識を向けながら次の動きの土台をしっかり作りたいものです。
【5番ポジション】
◆5番、かくあるべし
図の通り、両足それぞれのかかととつま先のラインが同一線上にくるまで脚を交差させたポジションです。
アンドゥオールがしっかりできていれば、上から見下ろすと両足は『=』のように平行になります。4番と同様、骨盤は前後左右にねじれることなく正面を向いていなければなりません。また、膝が緩みがちなので、意識して伸ばすようにします。
◆5番・大人バレエでの実際
身体能力的に一番苦労するのがこの5番ポジションなのではないでしょうか。アン・ドゥオールがよほどしっかりできていない限り、両足は『=』の位置にくるわけがありませんものね(泣)。。
とはいえ、足だけ力ずくで『=』の位置に持っていくことは厳禁。
大人バレエの実際としては、足は『<』『>』の形となるのが妥協点、というところでしょうか。
足の形はそうなってしまっても、5番は5番、3番ではないので、脚を交差についてはかかととつま先のラインが同一線上にくるまで深く、を頑張りたいところです。
6番ポジションについて
冒頭にも書きましたが、『6番』はクラシック・バレエの正式なポジションではないものの、レッスン時にしばしば耳にします。
図の通り、6番ポジションでは、両足を揃えつま先を正面に向けて置きます。
身体を引き上げて足裏全体を使って立つこと、重心を真ん中に置くこと、上半身の使い方などは1~5番と同じですが、6番ばかりは脚をアン・ドゥオールさせず両ひざをまっすぐ前に向けて立ちます。
とはいえ、両足の間の隙間が無くなるようお尻や内腿を締めて密着させる意識は必要です。
両足を平行に置くことから『パラレル』と呼ばれることもあります。(とはいえ『パラレル』は『並行』という意味の英単語なので、両足を開いた状態でつま先を前に向けて立つときなどにも使われる言葉です。)
主にバーレッスンの冒頭に、身体ならしのような感じで、6番ポジションから片足ずつルルべしたあとプリエ→(プリエをキープしたまま)かかとを上げてルルべ→膝(脚全体)を伸ばしてルルべ・バランス…という動きや、6番をとって上半身を前に倒したり後ろに反ったり横方向に伸ばしたりする『カンブレ』をするときなどに登場します。
アン・ドゥオールあってのクラシックバレエ、、、なぜ6番というあえてアンドゥオールを外したポジションをとるの?と疑問に思ったので考えてみたところ、『(アン・ドゥオールで)無い状態を知ることで、有る状態がより意識できる』『アン・ドゥオールにとらわれることなく姿勢(「まっすぐ立ってる感」みたいなもの)やお尻・内腿・下腹の使い方を確認できる』…などなどが思いあたりました。
意識すべきは『アン・ドゥオール』。
長~い記事になってしまいましたが、1~5番ポジションについて改めて考察してみると、やはり行きつくところは『アン・ドゥオール』でした。アン・ドゥオールありきの1~5番ポジションであり、クラシックバレエなのですね…
世界の舞台で活躍するダンサーたちでさえ『まだアン・ドゥオールができていない時がある』とこぼすほど、奥深く、絶え間ない地道な訓練(特に多くの日本人にとっては)が必要なアン・ドゥオール。
技術的な正確さをどこまでも追い求めると、大人バレエの目的や身体能力と相容れない場合もありますが、『アン・ドゥオール』への意識を失ったとき、それは『バレエ』ではなくなってしまいます。『バレエ』を踊りたいのなら、アンドゥオールへの意識は避けて通れないものなんだなぁ…とつくづく思った筆者でした。
~reverence~