バレエ用語と動き| 『タンデュ』 『ジュテ』 『グラン・バットマン』
2017/01/18
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同じ動線をたどって足を出す、『タンデュ』『ジュテ』『グラン・バットマン』。
『タンデュ』も『ジュテ』も、正式には『バットマン』=battement(「打つこと・鼓動・ビート」などの意)が前につき、それぞれ『バットマン・タンデュ』『バットマン・ジュテ』と呼ばれます。
特に『ジュテ』は、『バットマン』がついて初めてここで取り上げる『ジュテ』の意味に限定され、ジャンプ系の『ジュテ』と区別されますが、この記事内では口語的表現としてレッスンで一番耳にする省略形で記載しました。
高さや速さは異なるものの、同じ動線をたどって足を出すこれら3種のパについて、順に見ていきましょう。
タンデュ(バットマン・タンデュ)
仏単語『tendu』は、「 緊張させる・張る・伸ばしきる」という意。発音によっては『トンデュ』『タンジュ』と聞こえることもあります。
バレエのレッスンで『タンデュ』と言うときは、『前・横・後ろいずれかの方向へ、足裏で床を擦るように出し進め、脚をつま先まで伸ばしきる動き』を指します。
タンデュの動きを分解
例えば、1番から前(ドゥヴァン)にタンジュするときの動きを分解するとこんな感じです。
1、1番ポジションで立つ
2、重心は軸足に置き、両内腿どうしは引き付けあったまま、動足をズズズ…と擦り出すように前に動かし始める。
3、かかとを先行させて足をさらに前に擦り出していく。この時、内腿どうしは最後まで離さない意識をもつ。
4、動足が前に出るにつれ、かかとが最初に床から離れる。(が、足裏の他の部分はまだ床についている)
5、さらに動足を前に進めるとかかと位置が徐々に高くなるが、足が伸びきる一歩手前まで足指の付け根部分と足指は床から離れない(ドゥミ・ポワントの状態を通過)。
6、脚を伸ばしきる最後の段階で、足指の付け根→足指の裏が徐々に床から離れていく。つま先だけは床から離さず、足首・足指含め脚全体をしっかりと伸ばしきる。
7、1~6を逆回しにして1番ポジションに戻す。
出す方向が横や後ろになっても、①足裏を使って床を舐めるように動かす②ドゥミ・ポワントを通過する③軸脚・動脚ともに内腿を外旋させるという脚の使い方は同じです。
~2016年10月追記~
タンデュの足先の動きがとてもわかりやすいインスタ映像を発掘しましたので、シェアしたいと思います。
ABTスタジオカンパニーのマティアくん・18歳(彼は多数のレッスン動画をUPしてくれていて、とても参考になります^^)による『カーペットの上でタンデュしてみた』の動画。
6番ルルべ⇒一番に足を開いて(きっちり180度!)⇒前タンデュ。この時の足先の動きにご注目!です~!
レッスンで確認したい・タンデュのチェックリスト
☑脚が動いても、上半身はブレない(脚の動きにつられてユラユラ揺れない)
☑上半身と軸足は徹底的に引き上げる意識をもつ(でなければ、骨盤から上が脚にどっかりと乗り、脚が思うように動かせない)
☑動脚が動いている間、重心は軸足に置く(伸ばしきった時のつま先は床についているが、そこに重力をかけない)
☑延伸していく動足の裏は、部分や面積を変えながらも最後まで床についている(ドゥミ・ポワントを通過する)
☑足を出しても、アンドゥオールはキープ(内腿を外旋させる意識を持つ)
☑動足を戻すときは、勢いをつけて軸足に打ちつけるのではなく、両脚の内腿を互いに引き寄せて戻す。
☑戻るべきポジション(5番なら5番)に逐一しっかり戻す
☑足を伸ばしきる方向を明確にする(イメージとしては、前→おへその前につま先が来る/横→アンドゥオールで立った時のつま先方向に伸ばす/後ろ→軸足のかかとあたりに動足のつま先が来る)
☑脚は伸ばしきったと思うより更に長く遠くに伸ばす意識をもつ(しかし骨盤はねじらない)
ロシア・マリインスキーバレエ団のレッスン映像のなかで、『タンデュは最も大事な動きです。。。バレエのすべての動きがタンデュから始まると言ってもよいでしょう。』と言っているのを耳にしました。
一見、足を出して伸ばすだけ、に見えるタンデュ…奥深~~いんですね。
ジュテ(バットマン・ジュテ)
仏単語『jete』は「投げられた」という意味。
バレエのパとしての『バットマン・ジュテ』は、前出の『タンデュ』と同じプロセスをたどって脚を伸ばしきったら、その流れのままつま先が床から十数㎝くらいの高さに来るまで上げ、そして元のポジションに戻す、という動きを指します。
脚の動きとしては、『タンデュの足ちょい上げバージョン』といえる『ジュテ』ですが、時としてタンデュの脚の動きが往路・復路と時間をかけて行われるのに対し、『ジュテ』は足を上げて戻すまでの往復がひとつの流れとなっており、より速いスピードで行われます。しゅしゅっ!!というイメージです。
流派によっては、同様の動きの呼び方が『デガジェ』(「放たれた」の意味)、『グリッセ』(「滑らせた」の意味)となり、脚の上げ方や高さに多少違いがあるそうです。
レッスンで確認したい・ジュテのチェックリスト
☑タンデュと全く同様のプロセスを通過して、つま先を床から十数センチ上げる。
☑上がった足はキープすることなくすぐに下ろすが、脚全体がつま先まできれいに伸びきった残像が残るくらいしっかり伸ばしきる。
☑足を戻す際のポイントもタンデュと同様内腿どうしで引き付けあうように戻す。
グラン・バットマン
『grand』はご存知の通り「大きな」という意味。『タンデュ』と同じプロセスをたどって出した脚を高く振り上げて下ろす一連の動きを『グラン・バットマン』と言います。
脚を高く上げるグラン・バットマンは、バレエの象徴的な動きひとつ。
少しでも高くキメたい!という思い余って力任せに脚を上げると間違いなくグダグダになる^^;ので、きちんとポイントを押さえて練習したいものです。
レッスンで確認したい・グラン・バットマンのチェックリスト
☑タンデュと全く同様のプロセスを通過して脚を上げ下ろしする。(タンデュで足裏が床についている段階で床を擦り押す力を利用して脚を上げるイメージ)
☑骨盤が傾くのは脚がある程度の高さ(90度あたり)になってから。脚の動かしはじめから骨盤を動かすことで脚を持ち上げようとしない。
☑速く上げて遅く下ろす
☑動脚ばかりに気をとられない。軸足と上半身でまっすぐな芯を作る意識をもつ。
☑前方へのグラン・バットマンの際、背中が丸まらないようにする。
☑上げた脚はまっすぐに伸ばす。(膝・足首・足指は伸ばしきって緩めない)
マイアミ・シティ・バレエのプリンシパル、ジェニファー・カーリン・クロネンバーグさんによる『グランバットマン・アラベスク』のデモンストレーション動画を見つけましたので、リンクを貼っておきます。
床を擦るようにして足を動かしているのが見て取れるかと思います。
タンジュの重要性を再認識!
この記事を書くにあたり、今までにないほど『タンジュ』について考えたのですが(ベランダを掃いているほうきの先の動きを見ると、「これはタンジュの足指の使い方に似ている…」などと思ったりして)、タンジュには『バレエの身体の使い方』のかなりの部分が凝縮されているなあ…と思いました。
エラそうに『チェックリスト』なんて書いていますが、頭では理解できていることをなかなか身体で体現できないのが大人バレエのツライところ。
ジュテもグラン・バットマンも、きちんと足裏と内腿を使ったタンデュあってこそのもの。
つくづく感じた『タンジュの重要性』をしっかり心に留めて、全身全霊でタンジュの上達に臨みたいと思います!
頑張りましょう~!
~reverence~