上達のヒント バレエ用語と動き

バレエ用語と動き| 『タンデュ』 『ジュテ』 『グラン・バットマン』

2023/06/08

『タンデュ』 『ジュテ』 『グラン・バットマン』の概要

違いは到達点の高さ

いずれも 脚を伸ばして前・横・後ろに出す 動きを指す『タンデュ』『ジュテ』『グラン・バットマン』。
大きな違いは 到達点の高さ にあります。

・低) タンデュ =つま先が床につく高さ
・中) ジュテ =つま先が床から20㎝ほど離れた高さ
・高) グラン・バットマン =脚をできる限り高く上げた高さ

足の"通り道"は同じ

到達点の高さは異なりますが、足は同じ通り道をたどります。

最も高いグラン・バットマンの場合、最高到達点に達するまでに、床を離れるまではタンデュ、少し浮くくらいまではジュテを通過していくことになります。

正式には3つとも『バットマン』が付く

『タンデュ』も『ジュテ』も、正式には『バットマン』=battement(「打つこと・鼓動・ビート」などの意)が前につき、それぞれ『バットマン・タンデュ』『バットマン・ジュテ』と呼ばれます。
(グラン・バットマンは、それらと対比すると"大きく"動かすため"グラン"がついているのです。)

※特に『ジュテ』は、『バットマン・ジュテ』でここで取り上げる『ジュテ』の意味に限定され、ジャンプ系の『ジュテ』と区別されるのですが、この記事内では口語的表現としてレッスンで一番耳にする省略形で記載しました。

高さの他にも脚を動かす速さなど違いはありますが、同じ動線をたどって足を出すこれら3種のパについて、順に見ていきましょう。

『タンデュ』 『ジュテ』 『グラン・バットマン』それぞれ詳しく

タンデュ(バットマン・タンデュ)

『タンデュ』は

前・横・後ろいずれかの方向へ、足裏で床を擦るように出し進め、脚をつま先まで伸ばしきってから戻す動き

を指します。

仏単語『tendu』は、「 緊張させる・張る・伸ばしきる」という意。
『タンジュ』『トンデュ』と聞こえることもあります。
(このブログ内でもごちゃまぜになっていることがあります…)

タンデュの動きを分解

1番ポジションから前方向にタンジュするときの動きを分解するとこんな感じ↓になります。

1、1番ポジションで立つ

2、重心は軸足に置き、両内腿どうしは引き付けあったまま、動足をズズズ…と擦り出すように前に動かし始める。

3、かかとを先行させて足をさらに前に擦り出していく。
この時、内腿どうしは最後まで離さない意識をもつ。

4、動足が前に出るにつれ、かかとが最初に床から離れる
(が、足裏の他の部分はまだ床についている

5、さらに動足を前に進めるとかかと位置が徐々に高くなるが、足が伸びきる一歩手前まで足指の付け根部分と足指は床から離れない(ドゥミ・ポワントの状態を通過)。

6、脚を伸ばしきる最後の段階で、足指の付け根→足指の裏が徐々に床から離れていく。つま先だけは床から離さず、足首・足指含め脚全体をしっかりと伸ばしきる

7、1~6を逆回しにして1番ポジションに戻す。

出す方向が横や後ろになっても、
①足裏を使って床を舐めるように動かす
②ドゥミ・ポワントを通過する
③軸脚・動脚ともに内腿を外旋させる
という脚の使い方は同じです。

レッスンで確認!タンデュのチェックリスト

☑脚が動いても、上半身はブレない(脚の動きにつられてユラユラ揺れない)

☑上半身と軸足は徹底的に引き上げる意識をもつ(でなければ、上半身が骨盤にどっかりと乗っかる形になり、脚の動きを妨げる)

☑動脚が動いている間、重心は軸足に置く(伸ばしきった時のつま先は床についているが、そこに重力をかけない)

☑延伸していく動足の裏は、部分や面積を変えながらも最後まで床についている(ドゥミ・ポワントを通過する)

☑足を出しても、アンドゥオールはキープ(内腿を外旋させる意識を持つ)

☑動足を戻すときは、両脚の内腿を互いに引き寄せて戻す。(勢いをつけて軸足に打ちつけるのではない。)

戻るべきポジション(5番なら5番)に毎回きちんと戻す

☑足を伸ばしきる方向を明確にする(
イメージとしては、前→おへその前につま先が来る/横→アンドゥオールで立った時のつま先方向に伸ばす/後ろ→軸足のかかとあたりに動足のつま先が来る)

☑脚は伸ばしきったと思うより更に長く遠くに伸ばす意識をもつ(しかし骨盤まで持ってかれないように)

ロシア・マリインスキーバレエ団のレッスン映像のなかで、『タンデュは最も大事な動きです…バレエのすべての動きがタンデュから始まると言ってもよいでしょう。』と言っているのを耳にしました。
一見、足を出して伸ばすだけ、に見えるタンデュ…奥深~~いんですね。

ジュテ(バットマン・ジュテ)


『(バットマン)ジュテ』は

『タンデュ』と同じプロセスをたどって脚を伸ばしきったら、その流れのままつま先が床から20㎝くらいの高さに来るまで上げ、そして元のポジションに戻す

動きを指します。

『タンデュの足ちょい上げバージョン』といえる『ジュテ』。
時としてタンデュがゆっくりしたペースで行われるのに対し、『ジュテ』は足を上げて戻すまでをひとつの流れとして、より速いスピードで行われることが多いです。

『デガジェ』『グリッセ』とも。

仏単語『jete』は「投げられた」という意味。
言われてみれば、しゅっ!と手裏剣を投げるような感じがするようなしないような…

なお、流派によっては、同様の動きの呼び方が『デガジェ』(「放たれた」の意味)、『グリッセ』(「滑らせた」の意味)とも呼ばれ、脚の上げ方や高さに多少違いがあるそう。 
(筆者には違いがよくわかりません…^^; ちなみに『デガジェ』は割とよく耳にしますが、『グリッセ』は聞いた覚えがないです。)

レッスンで確認!ジュテのチェックリスト

タンデュと全く同様のプロセスを通過するよう意識。

☑つま先が床から離れる時に、足指でむぎゅっ!とつかむようにして空中でつま先を伸ばしきる。

☑上げた足はキープすることなくすぐに下ろすことも多いが、脚全体がつま先まできれいに伸びきった残像が残るくらいしっかり伸ばしきった瞬間を作る

☑足を戻す際のポイントもタンデュと同様、内腿どうしで引き付けあうように戻す。

☑所定のポジションに都度しっかり戻すよう意識。(早くなるとなおざりになりがち!)

グラン・バットマン

『グラン・バットマン』は

『タンデュ』と同じプロセスをたどって出した脚を 高く上げて下ろす動き

を言います。

『grand』はご存知の通り「大きな」という意味。
美しく伸びた脚を高く上げるグラン・バットマンは、バレエの象徴的な動きひとつです。

少しでも高くキメたい!という思い余って力任せに脚を振り上げると間違いなくグダグダになる^^;ので、きちんとポイントを押さえて練習したいものです。

レッスンで確認!グラン・バットマンのチェックリスト

タンデュと全く同様のプロセスを通過して脚を上げ下ろしする。
(タンデュで床を擦る力を瞬発力にして脚を上げるイメージ)

速く上げて遅く下ろすを意識。

動脚ばかりに気をとられない。軸足と上半身でまっすぐで強くしなやかな芯を作る意識をもつ。

骨盤が傾くのは脚がある程度の高さ(90度あたり)になってから
(脚の動かしはじめから骨盤を動かすことで脚を持ち上げようとしない。)

☑前方へのグラン・バットマンの際、背中が丸まらないようにする。

☑後方へのグラン・バットマンの際、脚を上げる前から最初から前のめりにならないこと。

☑サイドへのグラン・バットマンの際には、上半身が上げた脚の方向に曲がりがちなので気をつける

☑上げた脚はまっすぐに伸ばす。(膝・足首・足指は伸ばしきって緩めない)

マイアミ・シティ・バレエのプリンシパル、ジェニファー・カーリン・クロネンバーグさんによる『グランバットマン・アラベスク』のデモンストレーション動画を見つけたので、ご覧ください。
床を擦るようにして足を動かしているのが見て取れると思います。

タンジュの重要性を再認識!

この記事を書くにあたり、今までにないほど『タンジュ』について考えたのですが(ベランダを掃いているほうきの先の動きを見ると、「これはタンジュの足指の使い方に似ている…」などと思ったりして)、タンジュには『バレエの身体の使い方』のかなりの部分が凝縮されているなあ…と思いました。
ジュテもグラン・バットマンも、きちんと足裏と内腿を使ったタンデュあってこそのもの、ですね。

エラそうに『チェックリスト』なんて書いていますが、頭では理解できていることをなかなか身体で体現できないのが大人バレエのツライところ。。。
が、諦めてはそこで終わりなので、つくづく感じた『タンジュの重要性』をしっかり心に留め、全身全霊でタンジュの上達に臨みたいと思います!
頑張りましょう~


~reverence~




-上達のヒント, バレエ用語と動き
-, , , , ,