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バレエ公演レビュー|バレエ・スプリーム Cプロ2017年8月1日@兵庫芸術文化センター

2017/08/22

2017年7月下旬~8月上旬、東京・兵庫(西宮)・福岡で開催の、英国ロイヤルバレエ&パリオペラ座の合同ガラ公演『バレエ・スプリーム』。

8月1日(火)兵庫芸術文化センター・大ホールで行われたCプロを観てきたので、その感想を書きます。

※お名前の記載方法については、出演者欄には主催者発表の表記を、感想本文内では筆者がしっくりくる表記を姓名区別せず使わせていただいています。

 

A・Bプロ(東京)とCプロ(兵庫)との違い

東京でスタートした今ガラ公演のツアー。

東京でのAプロ×2日→Bプロ×2日を経て迎えた兵庫・西宮でのCプロでしたが、出演者のうち英国ロイヤルのフランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベは東京公演まででキャスティングシートから名前が消え(8月は別の公演予定があるのかな?もしやバカンス?)、2人少ない出演者での上演です。

チケット発売当初から2人が抜けることは決まっていた&チケット価格は東京と同じということで、この2人の穴を埋めるプログラム編成が為されるべきところだと思いますが、フランチェスカが大好きな筆者にとっては、東京公演と比べるとやはり若干物足りなく感じてしまいました。

とはいえ、ロイヤル&オペラ座のキャプテン的存在であるマクレイとマチアス、それぞれのソロがあるし、パ・ド・ドゥ系も親しみやすい見ごたえある演目がズラリと並んで豪華だし、単体で見れば決して悪くないのですが… 主催者サイドの配慮がもう少しあればなぁ…とちょっとモヤモヤして開演を迎えました(+_+)

 
 


 
 

第1部・英国ロイヤル・チーム

 

『ラプソディ』

出演:ヤーナ・サレンコ、スティーブン・マックレー

長い前奏を経て幕が開くと、そこにはキリリとした佇まいのマクレイ。

冒頭は、センター・レッスンでみられるような非常にシンプルなパが連続して行われます。全てのパがお手本のような完成度で、きちっ・きちっと正確に美しく行われていき、観ていて気持ちいい! シンプルなパでも決して単調にならず、観客にホゥ…とため息をつかせる美しさ。 ルグリの踊りを観た時にも思いましたが、本当に素晴らしいダンサーはタンデュひとつとってもアーティスティックなんですね。徐々に動きの範囲を広げ、パの難度や速さも上がっていったところで舞台袖へ。

穏やかな曲調に変わり、細かなパ・ド・ブレで登場したヤーナ。しばらくの間はアームスをY字にアロンジェさせてパ・ド・ブレで移動、時折音楽に合わせて頭の角度をフッ…と変えるだけという振りが続くのですが、その形の美しいこと・・・。動きが徐々に大きくなっていっても、うっとり気分を壊すような突っかかりは全くなく、女性らしくもハッとするアクセントをちりばめたヤーナらしい踊りが続きます。

再び登場したマクレイとのパ・ド・ドゥは、長年パートナーを組んできただけあって、ギクシャク感ゼロの怖いほど息の合った踊り。ロマンチックで劇的な音楽の美しさを余すところなく表現して見せ、余韻を残しつつリフトで舞台袖へと掃けていきました。

ここで終わり?…と思っていたら、さらなる見どころ(コーダ的な部分)が待っていました。最後のパートは、技の競演!!!マクレイの連続540(1度のジャンプで540°回転・バレエボーイズ憧れのテクニック)に、きゃあぁ!ヤーナのピルエットコンビネーションに、わあぁ!!!これだけのテクニックを見せつけておいて、ラストは『やれやれ!』と言うように、肩をすくめるポーズで締めくくり。おしゃれ~!

ちなみに、こちらのDVD↓にマクレイ&オシポヴァによる『ラプソディ』が収録されています。ヤーナとタイプは違えど、これまた超絶技巧を楽勝でやってのけるオシポヴァさんによるラプソディも、見もの!

 
 

『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ

出演:高田 茜、ベンジャミン・エラ

興奮冷めやらぬ空気のまま、舞台の雰囲気はがらりと変わって、ジゼルの墓前でのパ・ド・ドゥへ。

ウィリとなったジゼルのソロ・パート、パッセからデヴェロッペ、アチチュードでのプロムナード…パンシェというこのアダージオの冒頭は、観客の視線を一身に集めて行われる難しいシーンですが、コンディションが思わしくなかったのか、この日の高田さんの動きにはぐらつきが目立ち、世界観に入り込むまでには至らず。とはいえ、東京公演のレビューにも書いた通り、ジャンプ系のパは高さと美しさが際立っていましたし、甲が出た足先の美しさは秀逸でした。

エラくんも綺麗にまとめてはいましたが、目に焼き付けたくなるシーンはなく、心動かされる、とまではいきませんでした。"上手い踊り"と"観客の魂を震わせるような踊り"の間にあるものは何だろう?と観ながら考えてしまった。。。マクレイやマチアスなど何年も先を行くキャリアを積んだダンサーと比べるのは酷ですが、こうしたガラ公演で同じ土俵に立ってしまうと、どうしても物足りなさが目立ってしまいます。さらなる高みを目指して頑張ってほしい!

  
 

『アイ・ガット・リズム』

出演:スティーブン・マックレー

マクレイ自身振付によるタップ作品。この5日前にも東京で鑑賞しており、別記事にレビューを書きましたが、この日は8列目のほぼ中央というベストな座席で鑑賞できたこともあり、前回にも増してエキサイトしてしまいました。

白のタンクにブラックのパンツという普段着姿で、ふらりとステージに現れたマクレイ。冒頭は、鼻歌を歌うような軽いステップ。音楽に乗って刻まれるタップのリズムが心地いい!

ところどころにバレエのパを織り込みつつ、中だるみすることなく徐々に盛り上げて行くあたり、振付けも踊りも見せ方を心得ているなあ…と感じ入ります。

ラスト近くになると、バレエ的な回転やジャンプとタップとを融合させた動きで、大きく円を描いたり斜め方向に横切ったりとステージを縦横無尽に大きく使って、華麗な踊り(マクレイと言えば、な超高速シェネ含む!)を畳みかけるように惜しみなく披露!スタイリッシュかつクールな動きはあり得ないほど早く美しく、CGみたい! 終了前から起こりはじめた拍手が鳴りやまぬまま、大喝采で終演したのでした。

 
 

『白鳥の湖』第2幕よりパ・ド・ドゥ

出演:金子扶生、フェデリコ・ボネッリ

やはり東京で同演目を同キャストで鑑賞済みだったのですが、感想は大きく変わらず(前回の感想はコチラ)。バリエーション部分も踊ってほしかったな…

サラ・ラムの降板によりこのツアーへの参加が決まった金子さん、膝の手術から復帰され、こんなに踊れるまでに回復されて本当によかった!うんうん、と頷きながら拝見。コンディションをしっかり整えて、来る2017/18シーズンで、さらなる研鑽を重ね、また帰ってきてね!と心の中でエールを送りました。

 
 
 

第2部・パリオペラ座チーム

 

『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』

出演:ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン

大好きな演目、チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ。このツアーでは同キャストで2度目の鑑賞です。

"チャイパ"は英国ロイヤル公演映像(ロイヤルバレエ ヴィサラ/牧神の午後/カルメン/チャイコフスキーのパ・ド・ドゥ[DVD])でヤーナ&マクレイペアの踊りを20回以上は繰り返し観ているので、どうしてもそこが基準になってしまうのです^^;(初めて見た踊りがその作品の印象を決めることってありますよね。)
 
ダンサーそれぞれ個性があるんだからね、と自分に言い聞かせ、まっさらな気持ちで観ようと試みるのですが、心の中のフィルターはもはや外せない… 

ということで、東京公演の感想にも書いたとおり、ミリアムの軽やかで流れる水のような踊りはステキだと感じたものの、どうしても、『もうちょっとここで"キメ"が入ればなぁ…』とか、『観客席にお顔を向けてくれないのはナゼ?』となんやかんや考え、ちょっと気が散ってしまいました。

片やマチアス。筆者の中のフィルターなんて吹き飛ばすような踊りを見せてくれました! 柔軟性と芯の強さが絶妙のバランスで同居した踊りと、エレガントな佇まい。超絶技巧も青筋たてずあくまでもクールに、かつニュアンスたっぷりに踊りきって見せるあたり、さすが貫録のエトワール!と心からの歓声を送りました。

 
 

『ロミオとジュリエット』1幕よりパ・ド・ドゥ(バルコニーシーン)

出演:レオノール・ボラック、ジャルマン・ルーヴェ

こちらも今ツアー2度目の鑑賞。

事前発表されていた兵庫県立芸術文化センターHP記載のプログラムでは、『白鳥の湖』からブラック・スワンのパ・ド・ドゥを演る予定だったのですが、当日配布の最終プログラムで『ロミ・ジュリ』に変わっていました。

5日前の東京公演時には、ブラック・スワンのコーダで32回転が完遂できなかったボラックちゃん、『今日は回りきれるかな…?』と心配されていたので、コンディション面を勘案しての演目変更だったのかな、と思います。
とはいえ、ロミ・ジュリも、速くて細かい動きとダイナミックさ、パートナーシップが高く要求される難しい振付なので、決して簡単というわけではなく… 大変ですね、ダンサーという職業も。。。

ということで、ロミ・ジュリのバルコニーシーンですが、ボラックちゃんはまんま役柄の雰囲気で、ひとりで踊る部分は子ひつじさんみたいな足さばきで軽やかな舞いを見せてくれましたが、筆者的にはルーヴェくんがどうも…^^;

ヌレエフ版の振り付けは、他にも増してパートナーとの協調が要となっています。"支え・支えられる"だけではなく、引っ張り合ってお互いの力を利用したり、相手の動きを見越して先回りして動いて、はじめて振付通りの踊りが成立する感じ。タイミングも、力の強弱も、しっかりと息が合っていないとバランスが崩れて踊りが目に見えて乱れてしまいます。

恐ろしく難しい振りではあることは理解できるのですが、女性を肩に乗せて進むリフトではつないだ手と手に力がかかりすぎ、ブルブルブルッと震えていてヒヤっとしたし、他にもところどころ息が合っておらず、ボラックちゃんが自力で乗り切った?と見受けられる部分があって、ルーヴェくんがちょっと頼りなく映ってしまいました。

 
 

『エスメラルダ』パ・ド・ドゥ

出演:オニール・八菜、ユーゴ・マルシャン

こちらも2度目の鑑賞でしたが、ツアー終盤を迎えてさらに安定感を増した感があり、とても良かったです!

踊りも背丈やプロポーションの相性も、やっぱりバランスのいいペア。大柄で舞台映えして、ふたりを中心にぱあっと光が拡がるよう。強い存在感があります。

Bプロで『グラン・パ・クラシック』を観た時には、八菜さんを"ちょっとオーレリーを彷彿とさせる…"と書いたのですが、この日は"いや、ノンナっぽいかも…!"と山岸涼子さんの名作バレエ漫画『アラベスク』を思い浮かべたのでした。

 
 

『マンフレッド』

出演:マチアス・エイマン

フランソワ・アリュの降板によるプログラム再編で、急きょこのツアーでの上演が決まったヌレエフ振付の今作。キャストシートに書かれている作品解説によると、"超人的人物のマンフレッドが自己忘却を求める物語"とのこと。

前回鑑賞時も、一瞬にして苦悶するマンフレッドの心の中に引き込まれるような表現力に魅了されたのですが、どんな作品かわかって観る今回は、より踊りにフォーカスして鑑賞できました。

柔軟性を存分に活かした動きからにじみ出るような心の叫びの表現、今回もトリハダものの迫力でした!

 
 

第3部・『眠れる森の美女』ディヴェルティスマン

オペラ座&ロイヤル合同チーム、全員入り混じってのお祭り的プログラムの第3部。

クラシックチュチュをまとった女性陣と、王子の衣装で現れた男性陣。ずらりと揃うと壮観です!

記憶を頼りに披露してくれた踊りを挙げると…

序章(全員)
→リラの精のVa.(八菜さん)
→ローズ・アダージオ(高田さん、マクレイ、エラ、ルーヴェ、ユーゴ)
→オーロラのVa.@16歳の誕生日(ミリアム)
→王子のソロ@幻影場面(ボネッリ)
→オーロラと王子のPDD@幻影場面(ミリアム&ルーヴェ)
→青い鳥PDDコーダ部分(八菜さん&ユーゴ)
→オーロラと王子のPDD@結婚式(ヤーナ&マクレイ)
→王子のVa.(マチアス)
→オーロラのVa.(ボラック)
→コーダ(全員)

※金子さんは序章とコーダのみ登場。

否が応でも目を引いたのは、やはりここでもヤーナ&マクレイによるPDDと、マチアスによる王子のVa.。

技術も身体能力も、超ハイレベルなところで力が拮抗しているヤーナ&マクレイは、互いを讃えあい、競い合うあうように楽し気に踊り(この二人にできないことなんて無いんじゃないかしらん。)、

マチアスは技術で魅せるだけでなく、バックに宮殿の背景が浮かび上がってくるようなニュアンスたっぷりの踊りで、会場中が興奮に包まれました。

 
 

全体的な感想

 
筆者にとっては、最も好きな2大カンパニーがそろい踏みの、まさに夢の競演だった今ツアー。頑張って全3回鑑賞してきましたが、ミシュランのn3つ星レストランでフルコースを堪能したかのような、めくるめく絶品の踊りに『ああ、シアワセ!!終わらないで~!』と時が経つのを惜しく感じました。

筆者的ベストメンバーとしては、英国ロイヤルチームにマリアネラ・ヌニェス&ワディム・ムンタギロフ、オペラ座チームにドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオを加えたい! …なーんて、わがままですね^^;

とにもかくにも、是非とも定番化して頂きたい、すばらしい合体企画でした。ブラボ~!

 
 
~reverence~
 
 

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