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バレエ映画レビュー|『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち(2016)』を観て。

2023/05/25

2017年7月に日本公開となった、パリ・オペラ座バレエ団の舞台裏を描いた映画『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』を観てきました。

ちょうど『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン ~世界一優雅な野獣~』と同時期に・同じ映画館で上映していたので、同じくバレエホリックな姉と一緒に、あさイチからどどーんと2本連続バレエ映画鑑賞!という強行スケジュールで^^;。

パリ・オペラ座バレエ団を追ったドキュメンタリー作品は、正直言って似たようなのがたくさんあるし、バレエが好き&オペラ座のダンサーがある程度認識できる方でないと、ちょっと退屈しちゃうかも?(アート全般に興味がある方を除き…)ですが、

バレエのレッスン風景を飽くことなく延々見ていられる筆者にとっては、いろんな発見と"萌えモーメント"がたくさんあって、観てよかったです。

どんな映画?

カンタンに映画のあらましを。

基本情報

原題:『BACKSTAGE』
監督:マレーネ・イヨネスコ
2016年 フランス
86分 フランス語(日本語字幕)
監督のイヨネスコさんは、15歳までバレエを習った経験があり、多くのバレエ・ドキュメンタリーを撮っています。

主な監督作品は…
●アニエスル・テステュ 美のエトワール(05)
●バレエに生きる ~パリ・オペラ座のふたり~(11)
●パリ・オペラ座のミューズ アニエル・ルテステュ(13)
●ロパートキナ 孤高の白鳥(14)

うち、"ロパートキナ"↓↓は映画館に見に行ったのですが、とても良かったです。

次回作はマチュー・ガニオ(!!!)についてのドキュメンタリーだそう。これも行かねば。

内容(あらまし)

『BACKSTAGE』の原題どおり、ダンサーたちの舞台裏=リハーサル風景を追ったドキュメンタリーです。

説明的な語りは無く、アニエスへのインタビューを時折挟みつつ、舞台へ向けてのリハーサル映像がつなぎ合わせられて構成されています。

フィーチャーされている主なダンサー&作品は以下の通り。

【ダンサー】  ※所属・階級は作品公開当時
*アニエス・ルテステュ(パリ・オペラ座・元エトワール・2013年引退)
*ジャン=ギヨーム・バール( 〃 ・2008年引退)
*オレシア・ノーヴィコワ(マリインスキー・バレエ・ファースト・ソリスト)
*マチュー・ガニオ(オペラ座・現エトワール)
*ウリヤーナ・ロパートキナ(マリインスキー・バレエ・元プリンシパル・2017年引退)
*ステェファン・ビュリョン(オペラ座・現エトワール)
*アマンディーヌ・アルビッソン( 〃 )
*ジョシュア・オファルト( 〃 )
*オニール・八菜(オペラ座・プルミエール・ダンスーズ)

【作品】
*ジゼル
*愛の伝説
*ジェニュス
*パキータ
*パ/パーツ
*輝夜姫
*ラ・バヤデール

感想

冒頭に書いた通り、バレエのレッスン映像を飽くことなく見ていられる筆者にとっては"お宝映像"ばかりで、始終目が離せませんでしたが、とにかくリハーサル映像が淡々と続くだけので、バレエに興味がない方にとっては退屈な映画かもしれません。

とはいえ、引退して4年経つアニエス・ルテステュにほとんどの時間を割いていること、思っていたより映像が古く(2003年~新しいものでも2015年)"今の"というよりは、"ちょっと前のオペラ座"という感じだったことには、筆者もややガッカリ。

しかしながら、以下"みどころ"の項に挙げた通り、新たな発見や興味を掻き立てるところも多々あったので、観に行ってよかったです。

筆者的・みどころ

裏舞台でのダンサーの素顔

普段見ることができない、舞台以外のダンサーたちの素顔。

動画サイトやバレエ団のオフィシャルサイトでダンサーや裏方さんたちのバックステージ映像を公開していたりもしますが、より深く丁寧に、かつ、生々しいやりとりまですくい取った映像は、ドキュメンタリー映画ならでは。

ダンサー自身が踊りたい・表現したいものとプロデューサーの考える完成形が違ったり、共演者によって解釈や踊りのタイミングが違ったり、踊りやすい音楽の速さがオケの演奏と違ったり、、、いろんな方面とそれらの違いを調整しながら、公演に向けてのプリパレーションを進めていく過程が興味深いです。

アニエスの"THEフランス女性"な魅力

アンニュイな大人の雰囲気たっぷりのアニエス・ルテステュ。

ほぼ同年代(アニエスは1971年生まれでちょっとお姉さんですが)なのに、この大人の余裕、妖艶な存在感…。服やメイクの力を借りなくてもステキ~!
"シック"という言葉がここまで似合う女性はなかなかいません。

そんなアニエスの練習&リハ風景がふんだんに盛り込まれた今作。
エトワール時代の来日公演で彼女の『シンデレラ』を観た時やDVDで『白鳥の湖』を観た時には、硬質で抑えた踊りがちょっと物足りなくも感じましたが、回転の回数や速さ、脚の高さを最優先するのではなく、演じる役の空気感や説得力を第一に考えた(と思われる)彼女の踊りを見つめなおすいい機会となりました。

へえ~!ほお~!なプチ発見も。

邪道な楽しみ方かもしれませんが、バレエホリックな筆者的にとっては、へえ~!ほお~!と心踊るちっちゃな発見もいろいろ。

例えばトウシューズを履いている時。アニエスは綿っぽいのをつま先に詰めていたし、ロパートキナはまさかのナイロン袋みたいなので足先を包んでから履いてた!(見間違い…?)足先に何も詰めちゃダメ!と言われてるバレエ学校がある、と聞いた記憶があり、ほぼ素足で履いてるのかな?と思っていたのですが、プロフェッショナルなダンサーともなると自分の裁量でそれぞれのやり方があるんだな~と思いました。

『プリエをしっかり!』という指摘をマチュー・ガニオが受けていたことにも、ほお~! カンペキに思えるマチューでも、こんな超・基本的な注意をされるんだ!と驚きました。
(マチューつながりで…、別場面では、珍しく前髪を降ろしたマチューの姿が見られます!額を出した王子スタイルもステキですが、前髪を降ろしたマチューは超キュート…一見の価値アリ!ですよ。)

『もっと大人になりなさい。』とオニール・八菜さんが言われていたのにも『!』。2年ほど前の『ラ・バヤデール』の舞台リハーサルでの映像でしたが、考えてみれば彼女は当時21~22歳。社会人1年生と同年代だったと考えれば、そういう指導も受けるよね…と納得。
プロのダンサー然とした振る舞いが板について見える最近の彼女。少し前までは、新入社員みたいなアドバイスを受けていたんだと思うと、親しみが沸きました。

その名を聞いただけで心躍る『パリ・オペラ座』の中で、人々を魅了する舞台芸術を創り出そうと日々研鑽を重ねているダンサーたちの姿は、舞台裏でさえも美しかったです。
そんなダンサーの姿がつかのま垣間見られるのが、このドキュメンタリー映画。オペラ座がお好きな方は必見です!

~reverence~

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